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1,1,1-トリクロロエタン(第一種特定有害物質)について
特定有害物質のうち、第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)の1,1,1-トリクロロエタンを取り上げます。
別名
メチルクロロホルム、1,1,1-TCE、MC
特徴
常温では無色透明の液体です。塩素を含む有機化合物で、揮発性物質です。
用途
かつては電気・電子、輸送機器、精密機器等、幅広い工業分野で金属洗浄用に使われていました。これは、金属洗浄用に多用されていたトリクロロエチレンやテトラクロロエチレンの有害性が問題となったことから、それらの代替品としての需要が増えたことによります。この他、ドライクリーニング用溶剤、繊維のシミ抜き剤、また印刷工程で印刷製版を仕上げる際などにも使われていました。
その後、1,1,1-トリクロロエタンは、オゾン層を破壊することがわかり、モントリオール議定書に基づいて、生産や消費、貿易の規制などの国際的な取り組みが進められてきました。日本では、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)」によって、1996年1月1日以降は原則として製造が禁止されています。しかし、試験研究や分析用などの特別な用途、あるいは代替フロン(HCFC141bやHCFC142bなど)など、他の化学物質の原料として使用するための1,1,1-トリクロロエタンの製造は認められています。また、それ以前に製造されたものは、現在でも使用されています。
環境中での動き
1,1,1-トリクロロエタンは揮発性が高く、水中に入っても、水面から大気中へ揮発すると考えられます。このため、1,1,1-トリクロロエタンは、ほとんどが大気中に存在すると考えられますが、対流圏(地上から高度約10kmまでの範囲)の大気中ではなかなか分解されず、OHラジカルとの反応によって半分の濃度になる期間は3.7年と計算されています。海洋への溶解などを考慮して、大気中寿命を約5.0年と計算した報告もあります。
成層圏にはオゾンが多く存在しており、このオゾンの多い層をオゾン層といいます。1,1,1-トリクロロエタンの分解により生成した塩素原子がオゾンと結合することによって、オゾン層が破壊されます。オゾン層を破壊する力はCFC-11(フロン類の一種)の1/10です。環境省では1988年度から北海道において1,1,1-トリクロロエタンの大気中濃度を調査していますが、これによると1993年以降、急速に減少しています。
土壌や地下水に浸透した1,1,1-トリクロロエタンは、揮発によって失われないため、微生物等によってゆるやかに分解され、より毒性の高い1,2-ジクロロエチレンなどに変化すると報告されています。
環境基準
土壌環境基準 | 1mg/L以下 |
地下水環境基準 | 1mg/L以下 |
水質環境基準(健康項目) | 1mg/L以下 |
土壌汚染対策法の基準(第一種特定有害物質)
土壌溶出量基準 | 1mg/L以下 |
土壌含有量基準 | - |
地下水基準 | 1mg/L以下 |
第二溶出量基準 | 3mg/L以下 |
「事業者が行う土壌汚染リスクコミュニケーションのためのガイドライン」(公益財団法人 日本環境協会 平成27年6月発行)